ねこは椅子の下

ふと気づけばそこにいるように。気ままに。

【ひとりごと】綺麗なところで待っていて

祖父が亡くなった。

遠方に住んでいることもあって、わたしはあまり縁の深くない祖父だった。記憶にある範囲で会ったのは1度だけ。その1度もそんなに良い思い出ではなく、薄らとしている。

片道5時間かけて、家族で告別式へ行った。喪服にと引っ張り出してきたリクルートスーツがかなり緩くなっていて、痩せたねぇ!と笑った。車の中ではずっと寝ていた。気絶するみたいに寝てしまった。首が座らなくてぐらぐらしてつらかった。

認知症が進んだ祖母は周りのことがよくわからなくなっていて、切なかった。特に実の息子である父のことを思うと胸がキュッとした。亡くなった祖父もかなり認知症が進行していて、最期は妻のこともわからなかったらしい。親に忘れられる気持ちを、今はまだ想像すらできない。怖いな、と思ってしまう。

仏式のお葬式は馴染みがなくて、お経は何を言っているのかさっぱりだった。見よう見まねでお焼香を上げた。祖父の棺に花を入れた。ずっとぼーっとしていた様子の祖母がそこで泣き出して言った。

「綺麗なところに行って待っててね。追いかけるからね」

それを聞いて、つられてわたしも泣いてしまった。祖母は本当に祖父のことを愛していたんだなと思った。晩年はお互い施設に入って離れ離れだったと聞いている。ほんとうはきっと、一緒にいたかったんだろうな。

奇しくも12月は最愛のくろねこが亡くなった月だから、あのこも今綺麗なところで暮らせているといいなと願った。お祖父ちゃんと出会ったりしているだろうか。先に行ったお姉ちゃんねことはもう再会できているだろうか。

待っててほしいな。わたしより前に死んじゃったみんな。

苦しみも悲しみもない綺麗なところで、わたしを待っていてほしい。きっといつか追いかけるから。

でもその前に、生きているうちは、たくさん話をしようと思った。祖母とはもうあと何回会えるかわからないけれど、それでも会ったら話をして、忘れられてしまうかもしれなくても話をしたい。何度だって、わたしが貴女の孫だよと名乗りたい。

祖母だけじゃなくて、家族と、友人と、もっと共に過ごす時間を大事にしたい。いつか終わる人生、悔いのないようにとはよくいうけれど、その意味を深く考えた日だった。